バーが「席料」をいただく理由 【失敗談】席料を取らないとどうなるか

席料とは?バー運営

たいていのバーや居酒屋では「席料」というものが存在します。居酒屋だと「お通し」という小皿に乗ったおつまみ的なものが最初に出てきて、それがサインと言いますか、「あ、ここは席料がかかる店なんだな。」とメニュー表をしっかり見ると「当店は300円の席料を頂戴しています」なんて書かれてる。バーも安いところで300円、高いところだと3000円とか席料(チャージ)をいただきます。

席料は何のために?

当然、お客さんのなかには、席料を嫌う人も多いです。今回は席料を取るメリットではなく、席料を取らないデメリットを紹介します。

「席料無料」の現実

私はバーを開業してから数年間「席料無料」でやってました。売り上げの損益分岐点を考えれば、お客さんが全員お代わりを1杯でもしてくれれば充分やっていける計算だったからです。それは机上の空論でした。

現実は、ほとんどのお客さんはお代わりをしてくれません。ソフトドリンク400円で3時間も4時間も居座られます。

店内が満席になって、お客さんが新たに入ってきても譲ろうとしません。

「水ください」

さすがの穏やかマスターの私もイラッとして「すみません。お代わりをなされないんでしたら、今日はもうこの辺で、、」と提案しましたら、そのお客さん。

「あ、でしたら水、お願いします!」と。

正直、月単位の集計で赤字ではないのですが、私の給料は生活できるギリギリのものでして、貯金も出来ない、好きな映画も観に行けない、食事はコンビニで100円のパンを買ってきて、なんて余裕のない暮らしでした。なのにお代わりをしてくれないお客さんにはいろいろと上から目線で説教されたりして、ストレスも徐々に溜まってきました。

お客さんはお客さんで「安い店」ってことで、友だちを連れてきてその連れられた友だちも「いかに安く長時間過ごすか」ってことを公言しするのです。

400円で3時間も過ごせるバー最高!

お会計時にアルコールの人は500円、ソフトドリンクの人は400円という癖がつくほどです。500円玉1枚を財布から出す人たち。それでもお客さんに「お代わりしてくれませんか?」なんて言えません。

お代わりを促すのは野暮なこと?

1度勇気を出して、カウンターで完全に空いたグラスを前に2時間もしゃべってるだけのお客さんに「すみません。グラスお下げしますね。次はなにになさいますか?」と恐る恐る尋ねました。すると「あ、だったら帰る」とむげもなく帰ってしまいました。正直、500円でのんびりと過ごすお客さんは「遊び方」を知らない人が多いのです。

ご注文は?お代わりは?

あわよくば無料で過ごそう

席に座って1時間も2時間も注文さえしないお客さんも結構いたんですよ。信じられないでしょうが。マスターが促すべき?もちろん言いましたよ。すると「あー、あとで頼みますから」と拒否されたり、「えーと、なににしようかなー」とずっと悩んで結局メニューを手放し他のお客さんと喋り出したり、スマホをいじったり。「とりあえず水ください」なんて人も。

結局ノーオーダーで帰る人も

ノーオーダーで帰るお客さんが会計しないで出口に向かうので「すみませんが、ノーオーダーの場合は席料が500円発生しますので」と500円をなんとか徴収しました。それまでハラハラと気が気じゃなくドッと疲れます。

マスターがお客さんに対して丁寧に接しているのは「おかげさまで生きていけるから」感謝を込めて接しているのであって、3時間もおしゃべりの相手をして、お酒も出して「500円」のお会計では生きていけないのです。

このままだとバーもマスターも潰れる

家賃、水道光熱費、飲み物の原価、そしてバーを開業するのにもお金がかかっているのです。ボランティアではないのです。このままでは店を閉めることになってしまう。

お客さんには当然悪気はないことは分かっています。ルールの中のことですので、悪いこともしていません。だから逆に始末に負えなかったのです。

思い切って席料を取ることに

だったらその「ルール」を変えるしかない。

先輩のバーのマスターに相談したりして、やはり席料は取るべきだとなり、一念発起、席料を500円取ることにしました。

一国一城の主たるマスターです。誰にはばかることもなく店内の法律を変えることができるのです。とはいえビクビクと、1ヶ月前から店内に貼り紙をして「来月から500円の席料を取ります」と告知しました。

席料を取ったらどうなった?

来なくなったお客さんもたくさん出ました。お代わりをしないお客さんも相変わらずです。

が、こちらのストレスはなくなりました。お代わりをしてくれなくたって、このお客さんからは席料と合わせると1000円いただける。長時間居座るお客さんにもニコニコ自然に接することができます。

お代わりをしてくれる、たくさん飲んでくれるお客さんももちろんいます。その方は席料が500円かかろうとトータルすると結局はそう変わらないのだ、と笑っています。5杯飲んだのか6杯飲んだのか、の違いだと。

ますます幸せになりました

お客さんの質も、席料無料のときの頃と比較すると明らかにおもしろい人たちが来てくれるようになりました。当然売り上げも上がり、生活に余裕が出て来て、ますますバー運営も楽しくなりました。

最初から席料を設定しておけばよかった。今ではそう思っています。まあ「席料無料」を数年間やったからこそわかったことではあるのですが。

コメント

  1. やまざ より:

    眼から鱗の連続です。なんかぐっときました。
    店は店主が作る。そしてお客さんがつくる。
    共に幸せを紡ぐのですね。あー人生。

    • あくたばーあくたばー より:

      やまざさん!記念すべき初コメントです。ありがとうございます!実際に直面しないと分からないものですね。お客さまとの繋がりはプライスレスですから前向きに対応していけます。おかげさまで毎日楽しい日々を過ごしております。